犯意がなくて懲役10年

2018.01.05 Friday 01:02
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私が逃走中見ていた教団の裁判のニュースで一番衝撃だったのは、Bさんの裁判だ。
それは、Bさんが地下鉄サリン事件の殺人ほう助罪に問われている事件の裁判だった。
「求刑は10年」とアナウンサーは言った。
「『Bはそれがサリンであることを知り、事件に使われることを知りながらサリンの生成に関わった』というのが検察側の主張」とアナウンスは続いた。
「Bさんがサリンだと知っていたなんてありえない!」
「何も知らされていないのに10年???」
ショックだった。
Bさんは元々私と同じ厚生省に所属していたが、厚生省が分裂し、私とは別部署の第1厚生省所属となった。
分裂後、地下鉄サリン事件のサリンの生成場所になった場所にたまたま居合わせていた為、補助的な作業を手伝わされて罪に問われたようだ。
Bさんは教団内で私よりもステージは上だった。
それでも、Bさんがそれがサリンで地下鉄サリン事件で使われるとわかっていたなど、とても考えられなかった。
第1厚生省の大臣だった遠藤さんは分裂前の厚生省の大臣でもあり、とても秘密主義で厚生省のワークの内容(何を作っているのか)などは一切メンバーに教えてくれなかったし、分裂後に彼の方針が突然変わったとも考えられなかったからだ。
「私も10年の懲役になっちゃうのかな」
私は、自分が指名手配になった直後も、事件は教団の犯行ではないと思っていた。
しかし、しばらくして教団が起こしたらしいとわかった後は、知らない間にサリンの生成に関与してしまったのかと思っていたため、自分もBさんと同じ罪になるのかと思いそう呟いた。
一緒にニュースを見ていたCさんが言った。
「警察は容疑者が思う通りの供述をすれば優しいけど、犯行を認めないと本当に酷いことをするからなぁ…」
Cさんは昔、補導だか微罪での逮捕の経験があったらしい。
逮捕された事のある人がそう言うのだから本当なのだろう。
私はそう思って、恐怖と絶望を感じた。
「酷い取り調べをされて無理矢理罪を認めさせられてしまうんだ…」
「何も知らなくても10年の懲役にされてしまうのか…」
Bさんは取り調べで罪を認める自白をしてしまったらしい。
それが分かったのは私自身が逮捕されて、裁判の準備のために他の人と調書や裁判の記録を読むことができたからだ。
Bさんは捜査官に「遠藤はお前がサリンだとわかっていたはずだと言っているぞ」と言われ、あまりのショックを受け、本当は知らなかったのにかかわらず容疑を認めてしまったというのが真相のようだった。
一方、遠藤さんは「そのような言い方はしていない」と裁判で証言している。
捜査官は、味方はいないとBさんに思わせることで、Bさんの虚偽の自白を引き出したのだ。
冤罪の原因になるとして、問題視されている手法でもある。
全く同じではないが、私も似たような手法を取り調べ中にされた。
裁判等の記録によると、Bさんがサリンの生成に関わったとき、それがサリンであるとの説明はなく、防護服の着用などもなかったようだ。体調不良等があったという事情もうかがわれない。そのような状況でBさんがそれをサリンだと知ることは不可能だ。
江川紹子さんもこの裁判を傍聴していて「イソプロピルアルコールを滴下しただけで犯意を認定出来るのだろうか」と疑問に思われたという。
しかしながら、Bさんは自白調書を取られてしまったことで7年の実刑を受けることになった。
Bさんは現在、社会復帰している。
部署の分裂前に私と同じ部署だったため、私の裁判で検察側の証人となった。
私の弁護人が
「サリンの生成に関わったとき、それが何なのかわかっていましたか?」
と質問したとき、彼ははっきりとこう答えた。
「サリンだとは知らなかったです」
と。
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2020.03.01 Sunday 01:02
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